Brilliant Grunt

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【読書】『「自白」はつくられる 冤罪事件に出会った心理学者』

 無実の人が、罪を認めて犯行を自供するのは、一体どういうことなのか。
 
 取調官は、冤罪を作ろうとしているのではない。ただ確信しているのだ。「容疑者」が「犯人」であると。

 一般的には、死刑や無期懲役などの刑罰が言い渡されるかもしれないのに、自白するはずがない、と思いがちである。しかし、「可能性」と「たった今起こっている難」を天秤にかけることはできない、と著者は言う。
 苛烈な取調が続けば、人はとにかくそれを逃れようとする。その結果、無実の人が犯人を「演じる」ことになってしまうのだ。
 「落ちた」容疑者は「賢いハンス」状態へと陥ってしまう。そこからは、警察と容疑者が共同で自白調書を作り上げていくのである。
 それ故に、著者は自白にこそ、容疑者が無実である証拠が存在すると語る。

 しかし、裁判所は著者の心理分析をまったくもって無視するという。不遇である。

 それにしても、光市母子殺害事件の犯人にも、虚偽自白が含まれている、というのは驚きであると同時に、ややもすれば批判を受けやすい主張と思った。

 ただ、自白至上主義の影響がここにも出ているということと、感情的になりすぎる、というのはわかる。